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「自立型の高齢者向け賃貸住宅」で自分らしい暮らしを

老後を楽しく生きる〜住まい探し〜 講義4|講師:山床 哲夫
「自立型の高齢者向け賃貸住宅」で自分らしい暮らしを

*この記事はココカラ大学2020年5月〜11月まで連載していた内容を移設掲載しております。

前年まで続いたコロナ禍の中では、高齢者向けの介護施設では職員の皆さんも緊張を強いられていました。
感染予防対策を厳格に行う施設では外出や外部との面会が禁止されて、入居者からは「いつになったら家族と会えるのか」と焦りの声も上がったこともありました。

そのため、比較的お元気な入居者からは「外出や面会などを制限しない自立型の高齢者向け住宅へ転居したい」という動きもあったようです。

老後の住まいとして、この「自立型の高齢者向け賃貸住宅」というカテゴリーがあることは、まだまだ知られていません。

老後の住み替え先といえば、多くの方が老人ホームしか頭に浮かばないのが実情です。

「自立型の高齢者向け賃貸住宅」という選択肢があることをもっと広く知ってもらえれば、幸せなセカンドライフを手に入れる方々が増えていくと考えています。

さて、今年2月にご相談のあったKさん(83歳女性)の事例をご紹介いたしましょう。

横浜市内の戸建てで一人暮らしだったKさんは自宅で転倒して骨折し、入院を余儀なくされました。
幸いにもリハビリは順調で、3ヵ月後に退院できることになったのですが、主治医からこう告げられたといいます。

「要介護認定を受けた結果、判定は要介護3でした。このまま自宅に戻って一人で暮らすのは難しいですね」

そこで、Kさんは自宅をあきらめ、介護付有料老人ホームへ入居することにしました。
入居後は身体能力の快復も早く、ほどなくして最も軽い介護度の要支援1へと改善したそうです。

そうなると次第に気になってきたのが、介護施設で一緒に生活している入居者の皆さんの様子でした。
介護度の重い人が多いことから、認知症の男性が館内を徘徊していたり、食堂でも隣りは介助を受けながら食事する女性だったり。
やがてKさんは、少々気を病んでしまったそうです。

Kさんから私にご相談があったのは、そんな状況のときでした。

私が「“自立型の高齢者向け賃貸住宅”のことはご存じですか?」とお話しし、物件までご案内したところ、「こういうタイプの住まいがあることは知らなかった」と驚いていらっしゃいました。

Kさんは7月、地元にある「自立型のサービス付き高齢者向け住宅」へと転居され、今は落ち着いた毎日を送っています。

ある介護施設を見学した自立の方からは、こんな感想をお聞きしました。

「この施設では許可をもらわないと外出できないし、門限が夕方5時では友人とディナーにも行けません」

「大浴場で知らない人と湯ぶねに浸かりたくない。自分の部屋のお風呂に入りたいですね」

見学者からそうした声が上がるなか、近年は介護施設に代わって、自立型の高齢者住宅が選ばれる傾向にあります。
理由の一つとしてこの2~3年、自立型の供給が一気に増えてきたことが挙げられるでしょう。

そうした自立型の高齢者住宅と介護施設では、特に次の点で違いが際立っています。

❑自立型の高齢者向け賃貸住宅

・生活面は自由度が高い        
・介護サービスは自由に選択できる      

❑介護施設

・生活面はルールが多い
・介護サービスはスタッフが常駐し手厚い

要約すると、介護施設ではルールにしばられる代わりに「安心安全」の度合いは高くなり、高齢者住宅では自由度が高い反面、「安心安全」の度合いは低くなります。

しかし、高齢者住宅の場合は、安心安全の低いところを補うことができるという点が見逃せません。

というのも、訪問介護や通所介護のサービスが充実してきた現在、ヘルパーさんに居室へ来てもらうなど外部から介護サービスの提供を受ければ、要介護者でも十分に高齢者住宅で生活を営むことができます。

つまり、自分の要介護度に合わせて、いま必要な介護サービスだけを選んで利用し、自分なりにカスタマイズができるわけです(完全介護の施設では自由に選択できない)。

そうした住まい方が理解されるなか、要介護の方が「自立型の高齢者向け賃貸住宅」に入居するケースも増えてきました。

先日、お一人では廊下にも出られない要介護の方でしたが、自由な暮らしを望んで「自立型」に入居。
デイサービスに週3回通っていますが、「お風呂に入れてもらえるのが楽しいですね」と話していました。

この「自立型」希望者から最も多く寄せられるのが、こんなご質問です。

「将来、要介護度が重くなったとき、出ていかなければなりませんか?」
「いつまで入居していられるのですか?」

私はこうお答えしています。

「一般的には身体の衰えによって、貸主から退去を求められることはありません。
但し、万が一認知症になられて館内を徘徊してしまうなど、他の入居者との共同生活が困難になったときは継続できない可能性もあります。
そこは普通の賃貸マンションと同じルールだと考えてください」

今回ご紹介したように、老後の住まいは今、さまざまな種類・カテゴリーの中から選べる時代になりました。
そのことを知っていただければ、自分らしく心豊かなセカンドライフに向けて選択肢が広がっていくのではないでしょうか。

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講師プロフィール

ライフプランナー
山床 哲夫(やまとこ・てつお)

1980年8月生まれ。
両親について介護など老後の生活のことが心配になったとき、自分が無知であると気づいて不安になった。それがきっかけで、神奈川県の介護関連企業に就職。
介護業界ではさまざまな老後の不安、介護の疑問などにぶつかり、苦悩されているお客様と関わる中で、一人ひとりに合った住まい(生きる場所)や住替え先がとても重要だと感じる。
そんな経験から、間違いのない住まいや住替え先を多くの方に提案したいと考え、高齢者に特化した部署のある株式会社イチイへ転職。
老後の住まいや暮らし方についてアドバイスをする仕事に携わる。
お客様の「ここに住み替えて良かった」という声を少しでも多く聞くために、いま東京・神奈川・埼玉を中心に活動している。

講師インフォメーション

株式会社イチイ Good Life


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