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今から備えたい、老後の住まいの選択と住み替えのタイミング

老後を楽しく生きる〜住まい探し〜 講義3|講師:山床 哲夫
今から備えたい、老後の住まいの選択と住み替えのタイミング

*この記事はココカラ大学2020年5月〜11月まで連載していた内容を移設掲載しております。

これまでの講義では、今は高齢者向けのさまざまな住宅や施設があるため、ご自身に合った住み替え先が選べるという話をいたしましたが、もう一つの重要なテーマは「住み替えのタイミング」になります。

一般的にご高齢者は、70代半ばくらいから住み替えを考え始める方が多いのですが、大別すると、次の2つのパターンに分けることができます。

■高齢期の住み替えのパターン

1.60~70代で早めに高齢者住宅(自立者向)へ住み替える
2.自宅でギリギリまで住み続けた後、介護施設等へ入居する

この2つのパターンはどちらが正解なのかと尋ねられたら、私は「どちらも正解です」とお答えしています。

なぜなら、住まいを選択するということは一人ひとりが“生き方”や“ライフスタイル”そのものを選択すること。
決してあとで後悔していただきたくないと思うからです。

さっそく、2つのパターンを詳しく見てまいりましょう。

1.60~70代で早めに高齢者住宅(自立者向)へ住み替えるパターン

一般的に住み替える先は、バリアフリー設計で24時間駆けつけサービスや相談窓口があるなど、最低限の安心安全が確保されている「高齢者向け賃貸住宅」です。

自宅に住み続けていると、段差で転倒して要介護になるリスク、一人暮らしだと老化が進むといった問題がありますが、高齢者向け住宅ならルールにしばられず、自宅と同じく自由に生活できるところがメリットです。

早めに住み替えているのは、次のような方々が比較的多いと思います(あくまで傾向です)。

【早めに住み替えるご高齢者の特徴】

・自立して生活できる元気な方
・子どもがいない方(将来の介護に備え、先々のアンテナを張っている)  
・一人暮らしの女性
・残りの人生をできる限り健康でいたい方(介護施設に入りたくない)
・食堂(食事サービス)を目当てに入居する自立者の方

食堂付きの施設については、自炊が大変だからという一人暮らしの男性から好まれますが、実は意外にもニーズが高いのが一人暮らしの女性です。
「家族のために長年料理を作ってきたけれど、自分のために作りたくない」という声をよくお聞きします。

それでは、早めに住み替える場合に気をつけていただきたいことをお話ししましょう。

〈気をつけていただきたい事例〉

都内で自立して生活されていた一人暮らしの男性Gさん(66歳)。
安心安全を求めて介護付有料老人ホームへ入居しました。

「これでひと安心です。もう掃除や料理をしないでいいし、楽になりました」とGさん。
あまり外出はされず、部屋の中でボーとして過ごすことが多かったようです。

そして入居1年後、お医者さんから「脳の収縮があり、認知症の初期症状が見られます」と診断されました。 

老人ホームに若い年齢で入居したこと自体は間違いではないですが、必要以上のサービスを受けると、老いが早くなってしまいます。

高齢になっても身体的にできることはやり続けていただければ(但し無理はせずに)、健康寿命をのばすことができるでしょう。

2.自宅でギリギリまで住み続けた後、介護施設等へ入居するパターン

長年住み慣れた自宅や街は、友人もいるし居心地がいいのは言うまでもありません。

それでも60代を過ぎると、「そろそろ住み替えた方がいいのだろうか」と考え始めますが、なかなか決断できないのも現実です。

特に決断できないのは、圧倒的に男性の方。女性は自宅を離れることをためらわない方が多いと思います。
女性は頭の切り替えができるからでしょう。

また、自宅から動きたくない理由としては、荷物の整理が大変、自宅をどう処分すればいいのか分からないといった問題もあります。

次に、ギリギリまで自宅に住み続けた方で、あとで後悔されたケースをご紹介しましょう。

〈後悔した事例〉

都内の戸建てで一人暮らしの女性Nさん(89歳)は自宅で転倒し、大腿骨を骨折する大けがを負ってしまいました。

リハビリを終えた5ヵ月後、ようやく退院できるというとき、主治医からこう告げられたといいます。

「今の身体状況では自宅に戻って、一人で生活を続けるのは難しいですね」

そこで、Nさんの住み替え先を子どもたちが大急ぎで探すことになりました。

家賃など生活費の予算は毎月20万円前後。
何よりもNさんからは、地元の東京都内で探して欲しいという強い要望があったのです。

しかし、入居金数千万の介護施設はすぐに入れますが、予算に見合うところはどこも空いていません。
やむなく埼玉県朝霞市の施設へ入居。いろいろなことを妥協せざるを得ませんでした。

もう少し時間に余裕があれば、希望する施設が見つかったことでしょう。「もっと早く動いておくべきでした」子どもさんもそう後悔されていました。

〈住み替えで注意するポイント〉

自宅でギリギリまで住み続けるのはいいのですが、住み替え先は元気なときに探し始めておくことが大切なポイント。
余裕をもって動いた方のほとんどは、結果に満足されています。

「老後の住まいはどのタイミングで、どのような選択をするか」、とても大事なテーマです。
早いうちから考え始めていただければ、老後はきっと楽しく過ごすことができると思います。

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講師プロフィール

ライフプランナー
山床 哲夫(やまとこ・てつお)

1980年8月生まれ。
両親について介護など老後の生活のことが心配になったとき、自分が無知であると気づいて不安になった。それがきっかけで、神奈川県の介護関連企業に就職。
介護業界ではさまざまな老後の不安、介護の疑問などにぶつかり、苦悩されているお客様と関わる中で、一人ひとりに合った住まい(生きる場所)や住替え先がとても重要だと感じる。
そんな経験から、間違いのない住まいや住替え先を多くの方に提案したいと考え、高齢者に特化した部署のある株式会社イチイへ転職。
老後の住まいや暮らし方についてアドバイスをする仕事に携わる。
お客様の「ここに住み替えて良かった」という声を少しでも多く聞くために、いま東京・神奈川・埼玉を中心に活動している。

講師インフォメーション

株式会社イチイ Good Life


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