夏酒で涼を愉しむ
にほん酒はじめ 講義7|講師:葉石かおり
夏酒で涼を愉しむ
いよいよ夏酒の季節の到来です。
まあ、お酒好きの方は、やれ夏酒だ、花見だと、一年中、何かしら飲む理由を探しているんですけどね。はい、私も含めて。
さて、夏酒の話に戻りましょう。
夏酒とは読んで字のごとく、夏向けに造られた日本酒のこと。
ここ数年で定着した季節商品で、早いものでは5月中旬くらいから出回るようになりました。酒販店や居酒屋で「夏酒」という文字を見ると、「今年も夏が来たな~」と思うとともに、「そろそろ衣替えしなくっちゃ」とちょっぴり焦ります。
そう、夏酒はお酒好き達に季節の訪れを知らせる“夏の妖精”なのです。
では夏酒は一般的な日本酒とはどう違うのでしょう?
一番顕著なのは、その味わい。甘さ控えめで、後口がスッキリ爽やか。そして口の中でもたつくことなく、スッとキレ上がるのが特徴です。冷やすとさらに爽快感が増し、暑さでほてったカラダをスーッと冷やしてくれます。
どうですか? まさにジメジメと蒸し暑い日本の夏にぴったりですよね。
これまで夏と言えば、喉越しのいいビールやハイボールばかり飲んでいましたが、夏酒が登場したおかげで、真夏も涼とともに日本酒が楽しめるようになりました。
さまざまな夏酒が各酒蔵から出ていますが、おすすめしたいのが「吟醸原酒 まんさくの花 かち割りまんさく」(日の丸醸造)。「かち割り」とついているところから想像できるように、この夏酒は氷を入れても楽しめるタイプなのです。ラベルもかわいいでしょ? まるで甘味屋さんに下がっている暖簾のようですよね。
アルコール度数は19%と一般的な日本酒よりもやや高め。そのまま飲むのも良しですが、氷を入れると徐々に溶けてきて、いい感じに。後口はさっぱりしていますが、お米の旨味もしっかり感じられて、飲みごたえも満点です。クラッシュした氷にかけたら、大人のかき氷の出来上がり。スプーンで氷と一緒に日本酒を味わうなんて、粋じゃありませんか。
そしてお楽しみはもう一つ。そう、夏酒に合うおつまみです。
半京都暮らしの私がオススメするおつまみは「はも皮ときゅうりの酢の物」。はもの身ももちろんおいしいのですが、通が好むのは何と言っても皮なんです。脂がほど良く乗った皮は、塩もみしたきゅうりと一緒に三杯酢で和えると、水分を吸ってふっくらします。噛むと中からジュッと脂と一緒に旨味が出てきて、その旨味が残っているうちに夏酒をキュッと一杯。
「ああ、日本人で良かったなあ」としみじみ思う瞬間です。
とうもろこしの天ぷらもまた、葉石家・夏の定番おつまみの一つ。皮をむいたとうもろこしを縦半分に切り、手で粒をそぎ落として天ぷらにします。お好みですが、私は天つゆよりも塩派。とうもろこしの甘味がグッと引き立つからです。正直なところ、揚げ物は滅多にやりませんが、とうもろこしが出回るこの季節は別。エアコンの風がほとんど来ない灼熱のキッチンで、汗だくになりながら天ぷらを揚げる“苦行”を密かに楽しんでいます。
夏酒にまだあまりなじみがないという方は、ぜひ日本酒専門店や、日本酒の扱いを主としている酒販店に足を運んでみてください。また検索エンジンで「夏酒」と入れると、ずらっと情報が出てきますよ。
今は各社がこぞって夏酒を出されています。飲み比べしてみるのも一興。あ、でもくれぐれも飲み過ぎには注意してくださいね。夏酒は口当たりがいいので、ついつい飲み過ぎてしまうのが玉に瑕です(笑)。
<酒にまつわるエトセトラ>
今回ご紹介した「まんさくの花」を造られている日の丸醸造は、秋田県の横手盆地に位置し、良質な軟水に恵まれた穀倉地帯にある酒蔵です。
「純米」「小仕込み」で様々な酒米や酵母を使って挑戦され、手間暇がかかる少量多品種のお酒造りをされています。
ラベル制作も、見た目も楽しくしたいという思いから、社員でアイディアを出し合い、お酒のイメージに合ったラベルを作成されているそうです。
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講師プロフィール
酒ジャーナリスト、エッセイスト
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長
葉石 かおり(はいし かおり)
講師インフォメーション
▼著書 「名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義」
講座のイラストを制作されているのは藤井昌子さんです。
素敵なイラストをたくさん制作されています。
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イラストレーター 藤井 昌子 ホームページ