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もし突然、親の介護が必要になったらどうしますか?

老後を楽しく生きる〜住まい探し〜 講義2|講師:山床 哲夫
もし突然、親の介護が必要になったらどうしますか?

*この記事はココカラ大学2020年5月〜11月まで連載していた内容を移設掲載しております。

もしも自分の親が“介護の必要な状態”になったとしたら、まず何をすればいいのか。皆さんは、そんな疑問が頭に浮かんだことはあるでしょうか。

親の介護と住まいをめぐる問題では、途方に暮れてしまう方々が少なくありません。親御さんと子どもさんの双方とも不安な思いでいっぱいです。
しばしば親と子の考え方がすれ違ってしまうという現実もあります。

それでは、相談者の方々の具体的な事例を見てまいりましょう。

一つ目は、今年1月にご相談のあったSさん(58歳・女性、東京・北区在住)とお父さま(89歳)のケースです。

お父さまは妻に先立たれ、仙台市内の自宅で一人暮らし。
Sさんは突然の仙台からの電話に驚かされました。

「先ほどお父さんが散歩の途中、転んで大けがを負ってしまい、病院に搬送されました。骨折の治療でしばらく入院することになりそうです」

Sさんが東京から仙台まで大急ぎで駆けつけたことは言うまでもありません。幸い命に別状はなく、安堵しましたが、その後の経過についてはリハビリも順調。3ヶ月を経て無事に退院することができました。

そして、このときお父さまもSさんも「どうしたらいいのだろう」と悩んだのが、これからの生活のことです。

今回のケガを機に“要介護1”の認定を受けたお父さま。また同じように仙台で一人暮らしを続けるのか、それとも東京のSさんの自宅近くに転居するのか、という二者択一で考え始めました。

Sさんは一人娘ですから、お父さまに何かあれば、すぐに自分が寄り添ってあげたいと思うのは子どもの心情として当然でしょう。しかし、Sさんは東京でご主人や子どもたちと家庭を築き、毎日家事をこなす一方で、仕事にも就いています。

「仙台まですぐに駆けつけるのは難しいですね。父には私の近くで暮らしてほしいと思っています」

ところが、お父さまはまったく違う考えでした。

「40年近く住んでいる仙台には友人が多いし、思い入れもあるので離れたくないな。今の自宅をバリアフリーなどに改修すれば、まだまだ住み続けられるはずだ」

それでも、お父さまとSさんが決めた住まいは、東京・北区の高齢者向け賃貸住宅でした。
お父さまの不安をやわらげるため、3ヶ月間の“お試し入居”ができる物件を選定。
東京での生活がなじめなければ、いつでも仙台に戻れるようにして、ハードルを下げたわけです。

高額な入居金が必要な利用権方式の高齢者施設と異なり、賃貸住宅の場合は気軽に入居も退居もできるところがメリットといえます。

現在はSさんの家で一緒に夕食をとるなど、東京での生活に満足されているお父さまです。

もう一つ、具体的な事例をご紹介します。

昨年ご相談のあったMさん(57歳・女性、横浜市在住)のケースでは、Sさんとは正反対の選択をされました。

Mさんのお母さま(87歳)は、埼玉県秩父市の戸建てで一人暮らし。
足腰が弱くなり、おふろ掃除や庭の管理もつらくなる一方でした。
市役所に出向いて相談し、要介護認定を受けた結果、“要支援1”の判定でした。

そして、介護保険を利用しヘルパーさんに週1~2回来ていただき、家事などのお手伝いをお願いしたのです。

このときお母さまが一番望んでいたのは「住み慣れた秩父を離れたくない」ということでした。
しかし、娘のMさんは前述のSさんと同じく家庭をもっています。

「母の介護度がもっと進んでしまい、何かあったとき、すぐに秩父まで駆けつけるのはとても大変。できれば私の家の近くで暮らしてほしいんです」

そこで、Mさんの住む横浜市への転居を考え、市内のさまざまな“高齢者向け賃貸住宅”を数日かけて見学して回りました。

そして、最終的にお母さまとMさんが決めたのは、秩父の今の自宅で引き続き生活することでした。

但し、お母さまの安心・安全を考えて、自宅のバリアフリー改修を行ったほか、緊急通報装置を設置。
また、アイパッドとウェブカメラを購入し、ビデオ通話で親子がマメに連絡を取ることにしました。
今回はギリギリまで自宅で住み続けるという決断をしたわけです。

Mさんがお母さまのお気持ちを尊重した結果ですが、私は親と子どちらの選択肢も正解だったと思っています。
一人ひとりの生き方や家族の状況などに合わせて住まいを決めることが最も望ましい、と考えているからです。

親の介護が必要になったが、これからの親の住まいはどうすればいいのか―。
その答えは、お話ししてきましたようにいく通りもあります。

前回の講義でもお伝えしましたが、今は「自分らしい老後の暮らしが選択できる時代」であり、いい環境が整ってきたと思います。

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講師プロフィール

ライフプランナー
山床 哲夫(やまとこ・てつお)

1980年8月生まれ。
両親について介護など老後の生活のことが心配になったとき、自分が無知であると気づいて不安になった。それがきっかけで、神奈川県の介護関連企業に就職。
介護業界ではさまざまな老後の不安、介護の疑問などにぶつかり、苦悩されているお客様と関わる中で、一人ひとりに合った住まい(生きる場所)や住替え先がとても重要だと感じる。
そんな経験から、間違いのない住まいや住替え先を多くの方に提案したいと考え、高齢者に特化した部署のある株式会社イチイへ転職。
老後の住まいや暮らし方についてアドバイスをする仕事に携わる。
お客様の「ここに住み替えて良かった」という声を少しでも多く聞くために、いま東京・神奈川・埼玉を中心に活動している。

講師インフォメーション

株式会社イチイ Good Life


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