疲れた時にきく日本酒の飲み方
にほん酒はじめ 講義9|講師:葉石かおり
疲れた時にきく日本酒の飲み方
「はああー、疲れたーーーーー」
会社から自宅に戻り、ヒールを脱ぎ、メークを落とした後、こんな風に言ってソファになだれ込む。あなたはどうですか?
はい、私はその一人です。
働くオンナは張って生きているんですよ。世知辛い社会で必要以上にがんばって生きているワケです。なので心とカラダの羽を伸ばし切れる自宅は、いわば傷を癒すことができる唯一のピットインなワケです。そう、自宅は誰の目も気にせず、メークやスーツという名の武装を解くことができる、サンクチュアリなんですよね。
そんな時に「飲みたい」と思うのが燗酒です。
「まだ蒸し暑さが残る初秋に燗酒?」と思うかもしれませんが、カラダの中からほっこりするなら燗酒が超オススメなんです。それにはこんな理由があります。
何故、私が疲れた時に燗酒をオススメするのか?
それはまず、「温かくしたお酒はカラダに優しい」という確固たる理由があります。冷たいお酒は飲みやすく、早くに酔いを連れてきてくれるけど、その反面、血中アルコール濃度を急激に上げやすく、悪酔いしやすいというデメリットがあります。良く「冷や酒と親が言うことは後から聞いてくる」と言われますが、これはホントのこと。冷たいお酒は飲みやすいためクイクイいってしまいますが、カラダの中で温まり、吸収されるまでにタイムラグがあります。そのため、相当量飲んでも、酔いが回ってくるのが少し時間をおいた後のため、気づくと腰が抜けていた…なんてことも。
一方、温めて飲む燗酒は飲むペースも緩やか。さしつさされつつ、ゆっくりと飲むことができるのと、最初から体温と近い温度で飲むため、血中アルコール濃度が急激に上がることなく、ゆっくりと酔うことができます。従って、「気づいたら腰が抜けていた」となりにくいのです。また燗酒は内臓を冷やさないため、肝臓でのアルコール代謝が悪くなりにくく、そのため悪酔いしにくいとも。
難しいウンチクはさておき、自分のペースでゆっくり飲める燗酒がカラダと心にいいことは確かです。
ではここで、私が燗酒として愛してやまないお酒の代表2種をご紹介したいと思います! まずは「るみ子のお燗」です。ワタクシ、こちらの蔵にも伺い、蔵でこのお酒と蔵元のるみ子さんが作る料理とともに味わったことがあります。近江牛のソテーと合わせたのですが、それはもう絶品。蔵で2年間熟成させたお酒で、米の旨味が凝縮された、それはもう旨味たっぷりで、燗酒のために生まれたお酒です。蔵で味わった際は高価な近江牛でしたが、肉じゃが、じゃがいものチーズ焼き、アジフライなんかにも良く合います。ぬる燗もいいのですが、コシのあるしっかりしたお酒なので、私は飛び切り燗(55度)以上でもバッチリなお酒だと思っています。大好きなうなぎのかば焼きなんかもいいなあ。京都の川魚専門店「のとよ」のえび豆との相性もバツグンです。
もう一つは20年以上も前から飲み続けている「大七 純米生酛」。
日経新聞の「おせち料理によく合ってお燗にすると美味しい日本酒」の第一位にも選ばれた他、各お燗部門で受賞し続けるお酒です。個人的にも昔から良く飲んでいて、気づくと1本空いていたなんてこともざら。そのくらい飲みやすく、「お燗は臭い」というネガティブなイメージを一掃してくれるお酒です。
江戸時代に開発されたクラシカルな造りの生酛ならではの旨味たっぷりのお酒で、燗酒にすると五臓六腑に染み入ります。「昔ながら」と言っても口当たりは重たくなく、油を多用する現代食にも良く合う味わいです。串揚げ、焼き鳥(タレ)、あとアヒージョなんかにもいいですね。今の季節ならマッシュルームのアヒージョなんていかが?
燗酒は胃腸が疲れないからか、心の疲れもうまく取ってくれます。血中アルコール濃度が急激に上がらないため、酔いもゆっくりというのがいいですよね。
心とカラダが疲れた時こそ燗酒。ぜひお試しあれ。
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講師プロフィール
酒ジャーナリスト、エッセイスト
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長
葉石 かおり(はいし かおり)
講師インフォメーション
▼著書 「名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義」
講座のイラストを制作されているのは藤井昌子さんです。
素敵なイラストをたくさん制作されています。
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イラストレーター 藤井 昌子 ホームページ