斉藤さんが乗り越えた夫婦の危機
ココカラ夫婦物語 講義6|講師:高草木 陽光
斉藤さんが乗り越えた夫婦の危機
毎日、さまざまな夫婦問題のご相談をいただくのですが、その中でも多いのが、夫の“不倫”に関するご相談です。
内容としては、「夫が、男女10人くらいの旅行を計画しているが、行かせないようにするためにはどうしたらいいか」という、不倫ではなく仲間同士の付き合いなのでは? という内容だったり、「夫が同じ会社の部下と不倫していることがわかったので、今後どうしたらいいのかを相談したい」という深刻なものだったり、さまざまです。
その中でも、今回は斉藤 真知子さん(仮名)に降りかかった夫の不倫問題についてお話をしたいと思います。
当時、妻の真知子さん(45歳)は専業主婦でした。夫の和彦さん(43歳)はメガバンクに勤務しており、帰宅時間は毎日深夜0時近く。
夫が帰宅する頃には、小学3年生の娘はすでに夢の中です。真知子さんも、ついウトウトとしてしまうこともありましたが、夫のために軽い夜食を用意しておくことは忘れませんでした。
そんなある日のこと……。
帰宅すると、すぐに冷蔵庫に直行し、缶ビールを1本飲み干すのが恒例になっている夫でしたが、その日は違ったのです。
スーツを脱ぎ捨て、妻とは目も合わせずにお風呂場のドアを「バタンッ」と閉めた夫に、真知子さんは違和感を覚えたのです。
「なんかおかしい」。
そう感じた真知子さんは、無造作に脱ぎ捨てられた夫の背広を拾い上げました。
「やっぱりそうだ…」。
背広からは、かすかだけれど明らかに“女物”だとわかる、フローラル系の甘い香り、そしてポケットからは「いつもありがとう!今日も最高だった♪」と、かわいらしい丸文字で書かれたメモと「クラブ 絢香」という名刺。
その瞬間、頭に血が上り「何が最高だったのよー!!」と、気付いたら、わめきながらお風呂場の夫に詰め寄っていたのだとか。
その後、夫はすべてを白状しました。
半年前から、「クラブ 絢香」に勤めている“まゆ”という32歳の女と付き合っていること。その日は、“まゆ”という女が、お店を辞める日だったから、最後に行ってあげたこと。“まゆ”は、バツイチで10歳の子どもがいること。
そして、“まゆ”のことが哀れで放っておけないということ……。
真知子さんは、怒りを通り越して呆れかえり、夫こそが哀れに見えて情けなく思えてきたそう。
「そして、どうする気?」と聞いても、ハッキリとした返事をしない夫に怒りを覚えつつも、娘が起きないように声を抑えて「出て行って」というのが精一杯でした。
翌日、夫は「しばらくホテルに泊まるよ」と言って出て行ったそうです。
それから真知子さんの地獄が始まるのです。
夫は数日ホテルに泊まっていたようですが、その後アパートを借りてそのまま別居状態になってしまうのです。
そして、その別居は1年半も続くことになります。
その間、真知子さんはというと……。
子どもには、「パパは仕事で、しばらく家に帰ってこられない」とウソをつき通し、これまでの自分を見直し、ひたすら夫を待ち続けたのです。
「自分は悪くない。不倫をした夫が悪い」「夫のアパートに乗り込もうか」。
しばらくは、こんな気持ちがおさまらなくて苦しい日々が続きました。
でも、1年も経った頃から、だんだんと夫の気持ちに寄り添って考えることができるようになってきたのです。
「深夜まで働いていた夫に、私は夜食を用意するだけで“いい妻”だと思い込んでいたのかもしれない」
「夫の話を聞いてあげたことがあっただろうか?」
「自分の要望だけをいつも夫に押し付けていたかも」
「娘のことが第一で、夫のことはあまり気遣ってあげることができなかった」
「キツイ言い方ばかりしていた」。
そんな自分を振り返ることで「夫に優しくしてあげよう」という気持ちになっていったのでした。
これまでも夫とは、電話やメールで娘のことや、実家の両親のことなど、コンタクトはとっていた真知子さんですが、その日の電話の内容は違っていました。
「しっかり食べているの? 今夜、貴方の好きなビーフシチューを作ったから食べに来ない?」
夫は、戸惑いつつも「じゃあ、夜10時くらいになっちゃうかもしれないけど、行くね」と、少し嬉しそうだったと言います。
その夜は娘も大喜びでパパの帰りを待ち、久しぶりの一家団欒でした。
その日をキッカケに、夫は頻繁に家に帰ってくるようになるのです。真知子さんは、何事もなかったかのように夫を迎えました。
そして、とにかく“未来の楽しい話”をするように心がけ、夫の話もいっぱい聞くようにしました。
すると突然、「本当にごめん。迷惑ばかりで、辛い思いをさせて。あの人とは、もう会っていないから……」と。
今まで口にしなかった怒りや悔しさや辛かった思いを一気にブチまけそうになったけれど、「バカヤロー!」と一言叫んで、真知子さんは自分の気持ちにケリをつけたのです。
あれから6年……。
今でも、ときどき真知子さんからメールをいただきます。
「相変わらず危なっかしい夫ですが、家族3人で楽しく過ごしています。私は、パートですが仕事を始めました!今では職場の人たちとの飲み会が楽しくて仕方ありません」。
こんなご報告をいただくと、「この夫婦は、もう何があっても大丈夫だ」と、私も笑顔になれるのです。
※人物名、店名などすべて仮名です。
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講師プロフィール
夫婦問題カウンセラー
高草木 陽光(たかくさぎ・はるみ)
講師インフォメーション
▼著書《なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか》
▼イラストレーター 多田 景子 ホームページ
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