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Aさんが『死後離婚』を選択した理由

ココカラ夫婦物語 講義7|講師:高草木 陽光
Aさんが『死後離婚』を選択した理由

4年〜5年ほど前、『死後離婚』という言葉が世間を騒がせたのはご存知でしょうか。
当時、このテーマに関しての取材が殺到し、新聞や雑誌、テレビ局などを合わせて20件以上の取材に応じてきました。

『死後離婚』という、このインパクトが強い言葉は、実はマスコミ関係者がつくった“造語”です。

私は以前から、この『死後離婚』という言葉に違和感があり、どうしてもなじむことができませんでした。
なぜなら、死後に離婚はできないからです。

仮に配偶者が亡くなったとしたら、それは離婚ではなくて、「婚姻関係が“終了”する」という捉え方をします。

ところで、『死後離婚』とは、どのようなことを指すのかご存知でしょうか。
メディアで伝えられている『死後離婚』とは、“姻族関係終了届”を提出した人に対して使われているようです。

「姻族関係終了届」とは、配偶者との死別後、市区町村役場に申請することで、配偶者の姻族(親、兄弟など)との関係を終了することができる手続きのことです。亡くなった配偶者と縁を切るということではありませんので、遺族年金や相続などには影響はありません。

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1:Aさんが『死後離婚』を選択した理由

北関東にお住いのAさん(女性)55歳は、5年前に夫を47歳の若さで亡くしました。
結婚生活25年。2人の子どもは成人し、独立しています。
Aさんは、これまで義母や義姉から、幾度となく冷淡な扱いをされてきました。
Aさんは夫よりも5歳年上だったのですが、そのことを快く思っていなかった夫の両親や姉の反対を押し切っての結婚だったからです。

ですが、夫は常にAさんの味方になってくれました。
キツいことを言う両親と、Aさんの間に立ち、仲介役をしてくれていたのです。

ですが、夫が5年前に亡くなってから、義母や義姉のAさんへの当たりはますます強くなっていったのです。

そんなとき、Aさんは「姻族関係終了届」という手続があり、配偶者の姻族と“縁が切れる方法”があることを知ります。「義母や義姉と縁を切りたい」「今後、関わりたくない」「介護もしたくない」。そういった思いから、姻族関係終了届を申請したのです。

2:Aさんの胸中

姻族関係終了届を提出し、ホッとしたものの、Aさんはいくつかの不安を抱えていました。

何かと干渉してくる義姉の家は、Aさんの自宅から車で20分くらいの場所にありますが、夫の実家は車で10分程度しか離れていません。
普段の生活を送るぶんには、顔を合わせることはないので安心ですが、それでもすぐに行き来できる距離なので、Aさんとしては気が気ではありません。

「お盆や年末年始の付き合いはどうしたらいいのか?」、「電話があったら、どう対応したらいいのか?」「届を提出したことを相手側に伝えるべきか?」など、考え出したらキリがなく不安が押し寄せてくるのでした。

実は、姻族関係終了届というものは、届を提出した側のみ、その事実を知ることとなります。
つまり、出された側は、こちらが知らせないかぎり、(または、戸籍謄本を確認しないかぎり)その事実を知ることはありません。

3:夫の姻族への対応の仕方

「姻族関係終了届を提出したことを、夫の親や兄弟に伝える方がいいのか否か?」ということに関しては、ケースバイケースです。
私は、あえて伝える必要はないと考えています。伝えることが必要な“タイミング”がきたら伝えればいいのです。

では、「普段の付き合い方はどうしたらいいのか?」ということですが、嫌がらせや、無理な要望をされたら、毅然とした態度で意見を述べたり、お断りしたりすればいいだけです。

それで、自然に付き合いがフェードアウトしていけば理想的ですが、あまりにもしつこかったり迷惑だったりする場合は、姻族関係終了届を提出した事実を伝えましょう。

お盆や年末年始の付き合いも、自分がお断りしたいと思うのなら「今後、一切のお付き合いをご遠慮させていただきます」というようなお知らせを送るもの1つの方法です。

要は、“縁切り宣言”ですが、そのくらいの覚悟をもったうえで、姻族関係終了届を提出する必要があるということです。

4:「死後離婚」と言われたくない

先にご紹介したAさんを含め、姻族関係終了届を申請したからといって、「死後離婚と言われたくない」という人も少なくありません。

「夫の親や兄弟は縁を切りたいほど嫌いだけれど、亡くなった夫との思い出は大切にしたい」という気持ちの人も大勢いるということです。

また、姻族関係終了届を申請する人のことを、「鬼嫁」とか「薄情者」という捉え方をする人たちが少なからず存在することも事実です。

ですが、そういった多くの人たちは、残された配偶者が姻族関係終了届をどんな思いで申請するに至ったかということを積極的に知ろうとはしません。

たとえば、夫が生前中から、義母や親族たちとの関係がこじれていたり、疎遠になっていたりする妻がいるとしましょう。
そのような立場の妻が病気や事故で夫を亡くした場合、夫亡き後に義母たちとの関係を継続させていきたいと思う人は少ないのではないかと感じます。

もちろん、今までどおり疎遠のまま過ごすこともできますが、夫が一人っ子だったり、義母や義父に兄弟などがいない場合、義両親が亡くなったり介護が必要になった時などには、亡くなった“息子の嫁”に連絡が来たりすることもあるようです。

「そのような不安を抱えて過ごしたくない」という人の中には、「断る正当な理由を確保しておきたい」と考える人も少なくないため、これまで疎遠だったとしても“姻族関係修了届”を申請する人もいるわけです。

配偶者が亡くなってしまったとしても、婚姻関係修了届が全ての人に必要なわけではありません。
ですが、一部の必要な人のために、このような制度が存在することを知っておいていただければと思います。

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講師プロフィール

夫婦問題カウンセラー
高草木 陽光(たかくさぎ・はるみ)

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夫婦問題カウンセラーとなり、11年間で9000人のカウンセリングを行う。「直そうとしないで、わかろうとするカウンセリング」をモットーに、夫婦問題で悩みを抱えている人の心に寄り添いながら、解決への糸口に向けてお手伝いをしている。
美容師、育毛カウンセラーを経て、結婚を機に専業主婦となったが、夫の束縛や価値観の押し付けに違和感を覚え、「結婚生活とは何か」ということを深く考え始める。「離婚カウンセラー」という職業があることを知り、自分たち夫婦だけでなく、夫婦関係で悩んでいる人たちのために必ず役に立つと確信し、2009年に「NPO法人日本家族問題相談連盟」の認定資格を取得。【メディア実績】
・NHK総合「ニュース シブ5時」「あさイチ」
・フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「ノンストップ!」「バイキング」
・TBS「ビビット」「グッとラック!」
・テレビ朝日「羽鳥慎一 モーニュングショー」他。
【著書】
・なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか(左右社)
・心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK(左右社)

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