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カフェ目当ての美術館訪問だってアリですよ

茂世先生と行くアートワールド 講義2|講師:浦島 茂世
カフェ目当ての美術館訪問だってアリですよ

さて、「アートワールド」な講座は2回目

さっそく美術館を訪れて絵を見てみましょう……、と思ったのですが

<外国には貴族の邸宅を利用した美術館があり、その一室にカフェがあることも。
優雅な気分に浸れます。>

「美術館に行くというのがそもそも敷居が高い…」
「美術に関心のない家族を誘うのが難しい」

というお声をいただきました。
うーむ、確かにいままであまり訪れたことがなかった場所に、一人でいきなり出かけたり、興味関心がない人と一緒に行くのは、ちょっと躊躇しちゃいますよね。

だとしたら、こうしてみませんか?
「美術館のあるすてきなカフェに行ってみる、そしてついでに美術館に行ってみた」と。

このところ、美術館に併設されているカフェが増えてきています。
しかも、単なる休憩所ではなく、雰囲気や眺めをしっかりと考え、ゆったりできるカフェが多いのです。

すてきなカフェに入るために美術館にいってみて、「ついでに」展示も見てみた。そんな気持ちで気軽に入ってみたら、敷居も高くないはず。そして、そこで偶然にも自分が気に入った芸術作品と出会ってしまったらラッキー!

もちろん美術館サイドから考えれば、美術館のメインは展覧会なのだから、カフェがメインで、「ついでに」美術館に行くというのは本末転倒なこと。

とはいうものの、利用者目線で考えてみると、素敵なカフェがあったら、まずそこに行ってみたいと思うものです。
ここは、ちょっとだけ厚かましくなってみて、まずはカフェをお目当てに美術館に行ってみましょう! 

東京都内にも、素敵なカフェのある美術館はたくさんあります。しかも、展覧会に連動したメニューを揃えているところもあるのです。

こちらは、東京都渋谷区広尾にある山種美術館のとある日の和菓子セット。

山種美術館は日本画専門の美術館。敷設のカフェ「cafe 椿」では、展覧会に展示されている作品をイメージした和菓子を食べることができます。

こちらは日本画家の速水御舟による屏風の作品《翠苔緑芝》(山種美術館蔵)をイメージした「緑のかげ」という和菓子(2019年8月4日まで販売)。
どんな作品からこの和菓子が生まれたのかを逆に考えてみるのも楽しそう。
ちなみにお茶は、「らん香煎」という、蘭の花の塩漬けを煎じたもの。
ほんのり塩味で、お茶菓子との相性はぴったり。

速水御舟は卓越した画力で人々から注目されていたものの、病気によりわずか40歳でなくなった日本画家。
炎の中心に蛾が集まる《炎舞》(山種美術館蔵)は国の重要文化財にも指定されています。

こちらのカフェは、美術館に入らずカフェの利用だけでもOKのカフェ。ですが、せっかくですから展覧会もみておきましょう。
展覧会の余韻に浸りながら、先程まで見ていた作品をイメージしたお菓子を味わうという贅沢は、美術館に行ったひとだけができる贅沢なのです!

ちなみに、前回の講義で使用した写真は、東京都庭園美術館のカフェ「Café TEIEN」で注文したもの。
「Café TEIEN」は庭園美術館の新館にあるカフェで、展覧会を見た人だけが利用できます。
2018年に開催された本をテーマにした展覧会のケーキでした。

とてもかわいいケーキなのですが、展覧会が終わってしまったので、残念なことにもう食べられません……。

ですから、インターネットなどで素敵な美術館カフェの写真を見かけて、さらにそこに写っている料理にドキドキしてしまったら、できるだけ早く美術館に行ってみてください。食べたい料理がないのはとても残念ですから。

ほかにも、都内でしたら三菱一号館美術館や根津美術館、サントリー美術館に原美術館などなど、カフェのある美術館はたくさんあります。

お気に入りのカフェを見つけることができたら、その美術館にも頻繁に通うことになります。それはとても素敵なこと。

なので、美術館とともにカフェもぜひ楽しんでみてください。
そして、美術館の敷居を高く感じなくなったら、美術館そのものをお目当てにして出かけてみましょう。
さらに慣れてきたら、カフェのない美術館も訪問してみてください。

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講師プロフィール

美術ライター
浦島 茂世(うらしま・もよ)

神奈川県鎌倉市出身。
家族の影響で子どものころから美術館に頻繁に通うように。
特に頻繁に通っていたのは神奈川県立近代美術館 鎌倉(2016年閉館)。
大学時代に美学美術史を専攻。専門は1920年代の西洋美術・工芸について。 博物館学芸員免許も取得。同時に、 横浜のデパート内の美術館でアルバイト。
チケットやグッズ販売、監視など裏方業務に携わる。
「人によって絵の楽しみ方は様々なのだ」と、この時期に実感。
社会人経験の後、ワーキングホリデービザでフランスへ。
パリに滞在し、フランスやベルギー、イギリスなどさまざまなギャラリーや美術館に足繁く通う。特に通い詰めたのはポンピドゥーセンター。
帰国後、制作会社、マーケティング会社の制作職からフリーライターとして独立。
「OZmagazine」「東京人」「芸術新潮」など様々な雑誌やwebサイトで執筆をしつつ、国内外の美術館を積極的に訪問中。
主な著書に「東京のちいさな美術館めぐり」「日本の美術館めぐり」(株式会社G.B.)、「猫と藤田嗣治」など。

講師インフォメーション

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『東京のちいさな美術館めぐり』

『企画展だけじゃもったいない 日本の美術館めぐり』

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