芸術祭に行ってみよう!
茂世先生と行くアートワールド 講義3|講師:浦島 茂世
芸術祭に行ってみよう!
「芸術の秋」という言葉をよく聞きます。
けれども実は、夏こそ芸術を楽しめる季節なことをご存知ですか?
その理由はふたつ!
まず美術館が涼しい!
美術館は展示作品のコンディション維持のため、他の公共施設よりも温度と湿度が低めに設定されています。
だから、真夏に美術館に行くと、とにかく涼しくて気持ちがいい。
身近な日帰りリゾート地として美術館に行ってみるのもおすすめです。
ただ、長居しすぎると体が冷えてしまうこともあります。
冷え性の方はカーディガンなど羽織るものを持っていくのもおすすめです。
そして、もう一つの理由。それは今回の本題、「芸術祭」があるからです!
芸術祭って?
「芸術祭」とは、その名のとおり芸術をテーマにしたお祭りのこと。
世界各地でいろいろな芸術祭が開催されていますが、2000年代に入り、日本各地で、地域そのものを楽しむことを目的とした芸術祭が開催されるようになりました。
多くの地域が夏休み時期に芸術祭を開催することから、現在では「芸術は夏」なイメージが定着しつつあるのです。
ざっくり現在の芸術祭ブームの歴史を解説しましょう。
歴史といっても、まだ始まってから20年あまり。つい最近のお話です。
芸術祭ブームの先鞭をつけたのは、新潟県の中山間地域を会場に2000年から開催されている、「大地の芸術祭 越後妻有(えちごつまり)アートトリエンナーレ」でした。
過疎・高齢化が進んでいた新潟県の十日町市と津南町は、国内外からさまざまなアーティストを招聘(しょうへい)して、地域のさまざまな場所や歴史を舞台に作品を作ってもらったのです。
広大な自然を舞台にしたインスタレーション(その場所や空間、雰囲気も組み込んだ芸術作品のこと)は、世界に一つだけの作品。
これらを見るために、世界中からたくさんの人々が越後妻有を訪問するようになり、芸術祭は大成功。
芸術祭が開催されていない時期にも観光客が訪れるようになったり、移住者が現れるなど、地域に多くの利益をもたらすようになりました。
2018年の開催では、約54万人の人が訪れたそうです。
芸術祭で楽しめるのは、芸術作品だけでなく、地元の食材を使った料理や、現地の人々とのふれあいなど多岐にわたります。
また、作品は地域の伝承や歴史を取り入れたものも多く、作品を見ていくと、知らずしらずのうちに、その土地そのものの知識も増えていき、その土地が大好きになってしまう人も多いのです。
この越後妻有の大成功のあと、2001年には横浜市を舞台にした横浜トリエンナーレ、2010年からは、名古屋市や周辺地区が会場のあいちトリエンナーレ、そして直島や豊島など瀬戸内海の島々が会場の瀬戸内国際芸術祭などの芸術祭が続々と誕生。
いまでは、夏になれば日本のどこかで必ず芸術祭が開催されている状況になりました。
ちなみに、よく芸術祭の名称に入っているトリエンナーレとは、3年に一回開催される芸術祭という意味。
「大地の芸術祭 越後妻有 アートトリエンナーレ」は、次回開催2024年の予定です。会期年外の2023年も、多くの作品が公開されるようです。
▼「大地の芸術祭」について
▼「2023年の越後妻有」について
■芸術祭を楽しむポイント
(1)地域のことにも心を傾けるべし
芸術祭にある作品の多くは、アーティストが地域を訪れて感じたことや、調べたことなどが元になって作品を作っています。
・この作品が置かれているこの場所は、かつてはどんな土地だったのか
・この作品が置かれていなかった、昔の風景はどんなものだったのだろうか
・この土地に、この作品が置かれることで、風景の見え方はどのように変わったか
など、土地と作品との関わり方についても考えながら鑑賞してみましょう。
(2)できれば、一泊はしたい
地域全体を使った芸術祭は、とにかく移動が大変!
日帰りで見ようとすると、心のゆとりがなくなってしまいますし、地域の魅力(とくにおいしいもの!)を知る機会も減ってしまいます。
できれば、1泊以上して、長い時間をかけて芸術祭を楽しみましょう。
(3)公式ガイドブックや、スタッフのおすすめをチェック
その土地の特徴を踏まえた作品が多い芸術祭は、作品単体で鑑賞するだけだと理解することが難しい場合があります。その場所にスタッフの方がいる場合は、お話を聞いてみたり、公式のガイドブックで作品の成り立ちをチェックするのもおすすめです。
そんな芸術祭、今年も全国各地ですでに開催されています。
連休などを利用して、ぜひ一度芸術祭体験をしてみてください!
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講師プロフィール
美術ライター
浦島 茂世(うらしま・もよ)
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