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自分の「好き」を探しに、美術館へ!その2

茂世先生と行くアートワールド 講義6|講師:浦島 茂世
自分の「好き」を探しに、美術館へ!その2

前回、「一日時間を取って、上野公園を探検してみてください」というお話をしました。
今回はこの続き、国立西洋美術館を紹介します。

東京国立博物館と国立西洋美術館は、のんびり歩いてもわずか3〜4分の距離。上野駅からは1分ちょっとで行ける駅チカ美術館です。
そして、国立西洋美術館の魅力は展示作品だけではありません。
まず、建物の中に入る前に、時間をかけて外側を見てみましょう!

ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館 外観 ©国立西洋美術館

国立西洋美術館は、美術館のなかに入る前にまず外観を眺めてみてください。
この建物は20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエによって設計されました。

ル・コルビュジエは、最新の技術を建築に持ち込み、そして人間が暮らしやすくなる建物を考案し、建築の歴史を大きく変えたことから「近代建築の父」と呼ばれています。

ほぼ直方体の建物は、現代社会の我々にとっては、普通の建物のようにも感じますが、数百年前に建てられた建物が普通にならぶヨーロッパの町並みでは、このシンプルな建物は非常に斬新でした。

そして、彼の功績をたたえて、サヴォア邸やユニテ・ダビタシオンなど彼の様々な建築物とともに、2016年、この国立西洋美術館を含む世界7カ国17資産のル・コルビュジエ設計の建築が一括で「世界遺産」として登録されています。
つまり、わざわざ海外旅行に行かなくても、上野駅からわずか1〜2分で世界遺産を見に行けるのです。これは行かない手はありません。

オーギュスト・ロダン《地獄の門》1880-90年頃/1917年(原型)、1930-33年(鋳造)ブロンズ
国立西洋美術館 松方コレクション 撮影:©上野則宏

そして、建物の前にある庭にはさまざまな彫刻類が屋外展示されています。
ここも鑑賞ポイントのひとつ。ここで目をひくのがロダンの《地獄の門》。世界に8つあるブロンズ作品の1つです。ロダンはこの地獄の門というテーマに生涯をかけて取り組みました。
有名な《考える人》は、この地獄の門に出てくるモチーフの一部で、この前庭には拡大作が展示されています。

常設展示室の入口にある19世紀ホールは三角形の明かり取りの窓が印象的 ©国立西洋美術館

ようやく建物のなかへ。
そもそも国立西洋美術館は、実業家で美術品の大コレクターでもあった松方幸次郎の「松方コレクション」の寄贈返還がきっかけとなり、1959年に開館しました。

松方幸次郎は、明治時代に総理大臣も務めた松方正義の三男。
川崎造船所(現川崎重工業株式会社)の初代社長として活躍していました。
彼は日本にきちんとした美術館を作りたいという思いで、1万点にもおよぶ作品を収集していたのですが、昭和の経済恐慌などによりその夢は頓挫してしまいます。

パリに残されていた印象派作品を含む約400点の作品は、第二次世界大戦末期にフランス政府の管理下に置かれることとなりました。
戦後、これらの作品のうち375点が日本に寄贈返還されるときに、フランス政府は「きちんとした専用の展示施設をたてること」を要求。
このため、日本政府はル・コルビュジエに美術館の設計を依頼し、国立西洋美術館が設立されたというわけです。

松方がせっせと絵画を集めていたころはちょうど印象派の画家たちが大活躍していた時期。
そのため、国立西洋美術館の所蔵作品はすぐれた印象派作品が多いことも知られています。

クロード・モネ《睡蓮》1916年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション

こちらの作品は、松方がモネのアトリエに出向き、画家本人から直接購入したもの。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ばら》1889年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション

サン=レミの精神病院で咲いていたばらを描いたもの。
ゴッホはこの絵を描いた翌年になくなりました。
作品はゴッホの最期を看取ったガシェ医師が旧蔵していたもので、松方はパリの画廊でこの作品を購入しています。

松方のコレクションを基に開館した後、美術館はコレクションを徐々に増やし続けます。
現在は6,000点以上の作品を収蔵。常設展では約200点が展示されています。
中世末期から20世紀初頭にかけての西洋絵画が本館と新館で展示されています。

ペーテル・パウル・ルーベンス《眠る二人の子供》1612-13年頃 油彩、板 国立西洋美術館

ちなみに、本館に隣接している新館を設計したのは、ル・コルビュジエの弟子のひとり、前川國男。師匠の建物と一体となって機能するように前川が設計した建物もまたモダンですばらしいので、絵画鑑賞と合わせて建物鑑賞もお楽しみください。

■常設展示を見た後は…。

二つの美術館の常設展示を巡ったことで、日本美術、西洋美術の全体像を大まかにですが把握できたかと思います。

そのなかで、「あ、この作品いいな」、「この時代の絵は理由はわからないけれど、心地いいな」と思えるものが一つでも見つかったら大成功!

その好きな作家や時代などをしっかりと覚えておき、家に帰ってインターネットで調べてみましょう。好きな作家や時代の展覧会が開催されていたり、本が出版されていることも。

そして、日を改めて展覧会を見に行ったり、本を読んで知識を広げていくうちに自分の好きな世界がどんどん広がっていくはずです。

ということで、時間ができたら上野へGO!

自分の「好き」を探しにいってみましょう!

ということで、美術を楽しむ基本的な方法をお伝えしてきました。

私の講座は今回が最終回。自分の好きなジャンルや作品、作家を見つけることができたら、あとは楽しむだけ!このあとは自分のペースで、ゆったりと美術館に通ってみてください。

私はいつもどこかの美術館にお邪魔しています。
どこかで見かけたら声をおかけくださいね。

これまでお読みいただき、どうもありがとうございました!

■国立西洋美術館
開館時間などの詳細はコチラから


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講師プロフィール

美術ライター
浦島 茂世(うらしま・もよ)

神奈川県鎌倉市出身。
家族の影響で子どものころから美術館に頻繁に通うように。
特に頻繁に通っていたのは神奈川県立近代美術館 鎌倉(2016年閉館)。
大学時代に美学美術史を専攻。専門は1920年代の西洋美術・工芸について。 博物館学芸員免許も取得。同時に、横浜のデパート内の美術館でアルバイト。
チケットやグッズ販売、監視など裏方業務に携わる。
「人によって絵の楽しみ方は様々なのだ」と、この時期に実感。
社会人経験の後、ワーキングホリデービザでフランスへ。
パリに滞在し、フランスやベルギー、イギリスなどさまざまなギャラリーや美術館に足繁く通う。特に通い詰めたのはポンピドゥーセンター。
帰国後、制作会社、マーケティング会社の制作職からフリーライターとして独立。
「OZmagazine」「東京人」「芸術新潮」など様々な雑誌やwebサイトで執筆をしつつ、国内外の美術館を積極的に訪問中。
主な著書に「東京のちいさな美術館めぐり」「日本の美術館めぐり」(株式会社G.B.)、「猫と藤田嗣治」など。

講師インフォメーション

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