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自分の「好き」を探しに、美術館へ!

茂世先生と行くアートワールド 講義5|講師:浦島 茂世
自分の「好き」を探しに、美術館へ!

東京国立博物館 庭園

私は、美術ライターのかたわら、美術館が楽しいことを知ってもらう講演を行ったり、実際に美術館に興味をある人を連れて行って解説する活動も行っています。
そんな活動のなかで、参加者の方からよく聞く言葉が「美術館や展覧会に興味はあるものの、当たり外れがありそうで、行くときに迷ってしまう…」という声。

たしかに、「私は印象派が好き」、「伊藤若冲の絵がかっこいい!」など、しっかりした「好き」を持っている人は、自分の好みの美術館や展覧会を探しやすいですが、「なんとなく行ってみたい」気分のときは、ちょっと迷ってしまいますよね。

そうなんです、美術作品はいろいろなジャンルがありすぎて、どれから見ればいいのかわからないことがよくあります。
「そんなこと言わず、とりあえず片っ端から見ていけばいい」と、言いたいところですが、みんながみんな時間もお小遣いもたっぷりあるわけではありません。できれば、失敗したくないものです。

そんな方におすすめしている方法がひとつあります。

一日時間を取って、上野公園を探検してみてください。そのなかでも、東京国立博物館と国立西洋美術館は必須で!」と。

JR上野駅からすぐの場所にある上野公園周辺は、東京国立博物館や国立西洋美術館、東京都美術館や上野の森美術館に加え、恩賜上野動物園や国立科学博物館など、9つもの文化施設があるスポット。
平日でもたくさんの観光客が訪れ、活気に満ちた空間です。

この場所にある、東京国立博物館と、国立西洋美術館は、そのなかでも魅力的な企画展もさることながら、各時代の名品を網羅したコレクションを見ることができる美術館。
まず、この2つの美術館を回れば、なんとなく自分の好きなものが見えてくるはずなのです。

ということで、今回と次回の講座で2回にわけて2つの美術館のみどころを、さらりと解説します。

■東京国立博物館

(東京国立博物館 本館)

東京国立博物館、通称「トーハク」は、明治5年(1872年)に誕生しました。収蔵品数は約11万7,000件以上、そのうち国宝が89件、重要文化財は644件(2019年3月末時点)という、質も量も日本一の博物館です。

敷地はとても広大で、展示館は本館や平成館、表慶館など6つもあり、どこから入っていいのか迷ってしまいますが、初めて行くならば、まずは本館をめざしましょう!

(東京国立博物館のエントランス)

テレビドラマや映画のロケ地としても利用されているトーハクの本館。重厚な建物も見どころのひとつ。

本館で観ることができる「総合文化展」は、通常の美術館の常設展示にあたるもの。
縄文時代の土器から江戸時代の浮世絵や、明治の日本画まで、教科書にも出てくる名品が並んでいる空間です。

(平成館考古展示室 埴輪ステージ)
(本館11室は彫刻の部屋。寺院に行かずとも仏像彫刻の名品を見ることができます。)
(本館10室は浮世絵の部屋。こまめに展示作品が変わるので足繁く通ってみてください。)

鎌倉時代の仏像の迫力や、刀剣の美しさ、江戸の工芸品の豪華絢爛さなど、日本美術をいろいろな魅力を知ることができます。
歴史や美術の知識を知っていればより深く楽しめますが、初めて来た場合は、まず見て歩くこと。
ゆっくり歩きながら見ていても、自然と足が止まってしまう作品と時代を覚えておいてくださいね。

(本館2室 国宝室 「国宝室」にどんな国宝が展示されているかは、webで確認できます。
出かける前にチェックを!)

また、本館2階の「日本美術の流れ」の順路の途中にある、「国宝室」もおすすめです。
トーハクが管理している国宝をひと月に1点展示している場所なのですが、ここがけっこう空いている!
誰もが知っている作品が展示されていることもあるので、ぜひ訪れてみてください。

このほか、トーハクには企画展を展示する平成館や建物が重要文化財に指定されている表慶館、アジア美術を展示する東洋館に、明治期の洋画家、黒田清輝の作品を展示する黒田記念館(特別室は、不定期開室)などたくさんの見所があります。全部をしっかり見ようとすると1日ではたりないくらい。
一度に全部見ようとはせず、何回かにわけてじっくりと鑑賞しましょう。
美術館って、真剣に見ていると、けっこう疲れてしまうものですから。

トーハクを覗いてみたら、続いて国立西洋美術館に行ってみましょう!
次回は、国立西洋美術館についてご紹介します。お楽しみに♫

■東京国立博物館
開館時間などの詳細はコチラから


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講師プロフィール

美術ライター
浦島 茂世(うらしま・もよ)

神奈川県鎌倉市出身。
家族の影響で子どものころから美術館に頻繁に通うように。
特に頻繁に通っていたのは神奈川県立近代美術館 鎌倉(2016年閉館)。
大学時代に美学美術史を専攻。専門は1920年代の西洋美術・工芸について。 博物館学芸員免許も取得。同時に、横浜のデパート内の美術館でアルバイト。
チケットやグッズ販売、監視など裏方業務に携わる。
「人によって絵の楽しみ方は様々なのだ」と、この時期に実感。
社会人経験の後、ワーキングホリデービザでフランスへ。
パリに滞在し、フランスやベルギー、イギリスなどさまざまなギャラリーや美術館に足繁く通う。特に通い詰めたのはポンピドゥーセンター。
帰国後、制作会社、マーケティング会社の制作職からフリーライターとして独立。
「OZmagazine」「東京人」「芸術新潮」など様々な雑誌やwebサイトで執筆をしつつ、国内外の美術館を積極的に訪問中。
主な著書に「東京のちいさな美術館めぐり」「日本の美術館めぐり」(株式会社G.B.)、「猫と藤田嗣治」など。

講師インフォメーション

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カラー版 パブリックアート入門 タダで観られるけど、タダならぬアートの世界』

『東京のちいさな美術館めぐり』

『企画展だけじゃもったいない 日本の美術館めぐり』

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