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「介護保険」ってどんなもの?

私の介護とお金のおはなし 講義3|講師:市川 裕子
「介護保険」ってどんなもの?

2020年4月に介護保険法の施行によりスタートした「介護保険」。
日本では『介護は家庭(家族)の問題』という意識がありました。
これを社会みんなで支える仕組みとしたのが「介護保険」です。

「介護保険」は3年毎に改正されており、直近では2020年の改正が2021年施行となっています。
次回2024年度の改定に向けて、厚生労働省の社会保障審議会に続き財務省の財政制度等審議会においても社会保障費に関する議論が開始されていますが、財務省では社会保障費削減に向けた検討がされているのでこちらにも注目が必要です。

今回の講座が、「介護保険」の今を知り、これからの変化を考えるきっかけになればうれしいです。
突然やってくる介護生活は、親と子、それぞれの生活や思い描いていた未来を変えてしまうかもしれません。

早速ですが、質問です。

1.介護保険の加入者は何歳以上の人でしょうか?
2.介護保険を利用できるのは何歳からのどんな人でしょうか?
3.介護保険を利用するためには、どこに相談したらよいでしょうか?
4.介護保険のサービスには、どのようなものがあるでしょうか?
5.介護費用には、軽減策はあるのでしょうか?

順番に答えを説明していきますね。

1.介護保険の加入者は何歳以上の人でしょうか?

介護保険の加入者(被保険者)は、40歳以上の皆さんです。
65歳以上の方を「第1号被保険者」といい、40歳~64歳の方を「第2号被保険者」といいます。

2.介護保険を利用できるのは何歳からのどんな人でしょうか?

65歳以上の「第1号被保険者」は、介護になった理由を問わず『要介護認定』(介護や支援が必要であるという認定)を受けた方が介護保険を利用できます。
これに対して、40歳~64歳の「第2号被保険者」は、介護保険の対象となる病気(16種類)が原因で「要介護認定」を受けた方が介護保険を利用できます。交通事故などが原因の場合は、介護保険の対象外となります。

3.介護保険を利用するためには、どこに相談したらよいでしょうか?

要介護認定は市区町村の窓口に申請を行いますが、まずは、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談しましょう。
市区町村のWebサイト等で探すことができます。

「地域包括支援センター」には、保健師(もしくは経験豊富な看護師)や社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置されており、介護だけでなく、医療、保健などさまざまな領域の関係機関と連携し、高齢者の生活課題に対応してくれます。

地域包括支援センターが担当するのは人口2~3万人ほどが住んでいるエリアなので、中学校の学区をイメージするとわかりやすく探しやすいかと思います。

※別居している親に関する相談の場合は、親が住んでいる地域の「地域包括支援センター」へ連絡しましょう。

4.介護保険のサービスには、どのようなものがあるでしょうか?

介護保険施設に入居して受ける「施設サービス」、自宅を中心に利用する「居宅サービス」「福祉用具貸与・購入、住宅改修」、地域特性に応じた「地域密着型サービス」などがあります。
「施設サービス」は介護保険施設である『介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』『介護老人保健施設(老健)』『介護療養型医療施設』『介護医療院』で受けるサービスで、どのような介護が必要かによって入居できる施設が分かれています。

介護保険施設以外の施設(有料老人ホーム等)に入っている方が利用するサービス『特定施設入居者生活介護』、『デイサービス(通所介護)』、『ショートステイ(短期入所生活介護)』は「居宅サービス」に分類されます。
デイサービスは、レクリエーションを楽しみに通われる方が多いですが、入浴介護を利用すると設備が整っていますし、家族の負担を軽減することができます。

私の母はデイサービスの利用を嫌がったので最後まで自宅で入浴していたのですが、本人も介助する家族も気と体力を使う大仕事となり頻繁に入浴させることは無理でした。皆さんはぜひプロの手を借りてください。
ショートステイは、老人ホームや介護施設への入居を検討する際のお試しにもなりますし、介護する家族の休息にもつながるので、上手に利用してください。

嫌がる母をなだめすかして利用していた「居宅サービス」に、『訪問看護』があります。
看護師などに訪問してもらい手当てや点滴の管理等をしてもらうのですが、通院日と通院日の合間に利用すると体調の確認やケアをしてもらえるので安心です。

一人暮らしや高齢者だけでお住まいの方におすすめなのが「居宅療養管理指導」です。
医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士などに訪問してもらい、薬の飲み方や食事など療養上の管理・指導を受けるのですが、薬の飲み忘れや間違った飲み方をしていないかなども確認・指導してもらえるので離れて暮らす家族も安心できます。

「福祉用具貸与」の貸出対象は13種類で要介護度に応じて介護保険で借りられるものが決まっています。ただし、対象外のものも自費で借りることができるので取扱事業者に相談してみましょう。
母は要介護1だったので、手すり(工事をともなわないもの)は介護保険で借りられましたが、特殊寝台と呼ばれる介護ベッドは対象外でしたので自費で借りていました。自費でも月1000円台で借りられます。

「地域密着型サービス」は、市区町村によって異なるのでお住まいの地域の情報を確認しましょう。

参考例)手すりは介護保険で借りました。
参考例)介護ベッド(特殊新台)は自費で借りました。

5.介護費用には、軽減策はあるのでしょうか?

最後に皆さんがもっとも気になるであろう、介護費用と負担軽減についてのお話しです。

■介護保険サービスの自己負担割合

介護保険サービスの自己負担割合は、所得の状況などによって1割・2割・3割のいずれかとなり、負担割合を示す『介護保険負担割合証』が交付されます。

我が家はこの『介護保険負担割合証』が発行されず1割負担の対象なのに病院等の窓口で3割の支払を求められた時期がありましたので、要注意です。

■介護保険サービスの支給限度額(1ヶ月)のめやす

介護保険のサービスは、利用料の1割~3割を支払うことで利用できますが、要介護度ごとに1ヶ月に1割~3割負担で利用できる金額の上限(支給限度額)が設けられています。
限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分が全額自己負担となります。

2019年10月1日~ 消費税率引き上げに伴う介護報酬の改定反映後の金額
出典:厚生労働省 

■自己負担が高額となった時の負担軽減について

同じ月に利用した介護サービス利用者負担(1割~3割)の合計が高額になり、限度額を超えた時は超えた分が「高額介護サービス費」として後から給付されます。
出典:公益財団法人 生命保険文化センター

以上の軽減策のほかに、低所得の障がい者の方のための負担軽減、市区町村独自の負担助成制度などもありますので、ぜひお住まいの地域の独自サービスについても調べてみましょう。

お住まいの地域の役所や地域包括支援センターへ問い合わせすると、『「介護保険」の利用手引き』の冊子やデータで提供している場合はダウンロード方法を案内してもらえます。
ちょっとした不安や心配ごとだと遠慮せずに、ぜひ一度相談してみましょう。

「介護保険」の概要とお金に絞ってご説明しましたが、大変長い内容になってしまいました。

皆さんが「介護保険」の今を知り、これからの変化を考えるきっかけになる内容はありましたでしょうか?

講義1の介護にかかる費用の金額をみて心配になった方もいらしたようですが、この講座を通して不安や心配を解消する方法を知り備えていただければ幸いです。

次回のテーマは『「介護と仕事を両立するためには』です。
介護離職を防ぐための支援制度ついてお伝えしたいと思います。

講座のコメント欄に質問や詳しく知りたい内容をご記入いただければ、リクエストにお答えしていきたいと考えておりますので、遠慮なくご意見や感想をいただけると嬉しいです。

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参考情報

■厚生労働省:介護事業所・生活関連情報検索(介護サービス情報公表システム)
→介護保険法に基づく全26種類54サービスの事業所・施設に関する情報が検索・閲覧できます。
各地域の地域包括支援センターの情報も検索できます。

■マイナンバーカードをお持ちの方は、「ぴったりサービス」を活用すると市区町村の子育てや介護をはじめとする行政サービスの検索・オンライン申請や届出ができます。

■「介護ワンストップサービス」のご案内
※要介護・要支援認定申請などの9種類の手続きのオンラインサービスを「介護ワンストップサービス」と呼んでいます。
→「介護ワンストップサービス」の利用方法が案内されています。
出典:独立行政法人 福祉医療機構 


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講師プロフィール

介護ファイナンシャルプランナー CFP®
市川 裕子

メーカーで会社員をしつつ母の介護を行うこと10年。
そのかたわらで様々なことを学び、ファイナンシャルプランナー、福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。
これらの知識や自分の経験を身近な人達の為に活かしたいと思い、NPO法人 NPO法人 くらしとお金の学校に参加したり、教育活動やブログ等で情報をシェアし、地元を中心に根付いた行動をしています。
母の介護を行った10年間の経験を交えながら、介護とお金に関する情報を皆様にお伝えしたいと考えています。

講師インフォメーション

▼NPO法人くらしとお金の学校


▼講師ブログ いちこの知恵袋


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